1.はじめに
色使いをおさえ、モノトーンに近い表現で、形の関係を追求した。
特にゆるやかな曲線と曲線の「間」の美しさを課題とした時代である。
武蔵野美術大学教授の故清水昭八先生から「透明感がある作品」と評価されたのもこの頃である。
★1973年リボンとシャネルの箱(緑リボン)
●1973年リボンとシャネルの箱(銀リボン)
●1974年リボンとシャネルの箱(銀地)
●1982モダン32:作品82Ⅱ
●1984モダン34:Ribbon84
●1986モダン36:作品Ⅱここから遠く離れて
2.作風
シルクスクリーン印刷による作品が多いが、写真製版の技法で版も網目に細かい絹布を使用しているため、一見銅版画リトグラフと見間違える人がいる。
色数を数色に限定したが、純色を使わず混色しオリジナルな色使いをした。
ダーク系黒や銀を主色としたためモノトーンの印象を与えた。
接写レンズにより近接で撮影した部分と、現物を写真カメラにおさめ原版に縮小して焼き付けた部分を同じ画面に印刷することで幻想的優雅でシンプルな画面構成を可能にした。
3.製作意図
モチーフに強いこだわりをもって製作した作品である。
テーマがあってその表現のために材料を探すというよりは、使いたい材料があってそれらを収集し組み合わせ、構成することで造形を生み出す。
気に入った場面を選んでいった。
4.テーマ設定理由
1980年代は、Ribbonをモチーフとして制作した。素材としてのRibbonは曲線の動きが美しく形態そのものに魅力があった。また、少女期の晴れの小道具として、華やかな思い出としても記憶に残る。また、特別なモノや時に使うイメージがある。このようなRibbonを使って作品を作りたかった。テーマ設定理由でなく、モチーフ選択理由のほうが適切かもしれない
5.社会的背景と立場
石油危機なども経験したものの右肩上がりの経済状況であった。バブル時代目前であったが、社会党が一時期政権を取るなど価値の多様化が進んだ時代だった。
個人としては80年代に教職に就き、家庭的にも夫と二人の子供そして叔母も加わり、愛に満ちた生活を送る。
6.作品内容
写真のリアルさを活かした。細かい網点のメッシュのシルクを選び印刷をしたことで、Ribbonの柔らかさと上品さを表現することが出来たと思う。画面の周囲のRibbonは、部分を切り取り構成することで、風邪になびくようにも、静止しているようにも、感じさせた。中央のシャネルの箱は、全体構成にアクセントとして。画面を引き締める効果があった。箱の影とRibbonの影が方向が異なることが、魅力と考えた。影はみかたによってはロケットのようにも印象を与える。
7.作品技法
シルクスクリーン(写真製版)メッシュの細かい網がけ、2~3色使いの作品が多い。
黒色に朱色・黄色・青色などを多少混色した。黒のきつさをおさえたインクを使用。ただ、シルクのメッシュを細かいものを使用しているので、甘くなりすぎない程度の混色を心掛けた。
Ribbonの表面側に緑(銀もあり)をほどこして変化を付けた。
8.発表団体と発表場所
- 1980年1月:第15回神奈川県美術展入選神奈川県民ギャラリー、神奈川県美術祭実行委員会
- 1981年4月:モダンアート協会展初入選、東京都美術館、モダンアート協会主催
- 1982年6月:書籍表紙絵原画―青春出版社
- 1982年4月: モダンアート協会展入選、東京都美術館、モダンアート協会主催
- 1983年4月: モダンアート協会展入選、東京都美術館、モダンアート協会主催